





佐藤健寿が廃墟の王、軍艦島へ。
"この町には耳をふさぎたくなるほどの静けさがある"
軍艦島に描かれた謎多き一編の「詩」。
その言葉に導かれた、新たな軍艦島の光景とは ──
今は上陸困難となった長崎県・端島。
通称、軍艦島の内と外を捉えた珠玉の写真集
古くはローマの遺跡群から今日の東日本大震災の跡地まで、
あらゆる文明=社会はいつか荒廃して自然に帰すことを、
実は私たちは、経験的に、あるいは歴史的に、よく知っている。
ところが私たちは永続的な進歩という共同幻想を維持することで、
この社会をどうにか成立させなければならない。
それは文明が本質的に抱えるパラドックスである。
だからこの欺瞞からすでに解放された軍艦島に立つとき、
むしろ私たちが矛盾だらけの存在であることに気付かされる。
そして社会を成立させる幻想と無常の現実との境界に浮かぶ島で、
語るべき言葉を失うのだ。
(あとがき「幻想と現実の境界に浮かぶ島」より)。